もともとは外来患者さんへの説明用に作って配布している文章ですが、一般的な情報として役立つかもしれないと思い、少しだけ改変してここにも置くことにしました。
COI(利益相反)について:この記事は製薬会社からの依頼や資金提供を受けず、こちらの判断で書いたものです。ただし筆者は、製造販売元である武田薬品が主催するオーゼイフルに関する遠方での講演会に、今後旅費の援助を受けて参加する予定です。
ナルコレプシータイプ1(情動脱力発作を伴うナルコレプシー)の人に、新しい治療薬(オーゼイフル)が使えるようになりました。
起床時と、その3~5時間後に、それぞれ1錠ずつ、1日合計2錠服用する薬です。0.5mg, 1mg, 2mgの3種類の大きさがありますが、どの大きさでも値段はほぼ同じです。
ナルコレプシータイプ1の患者さんでは、オレキシンという神経伝達物質が失われることにより、様々な症状が出ます。今回使えるようになったオーゼイフルは、オレキシン2受容体選択的作動薬というタイプの薬で、失われたオレキシンのような働きを体内でします。その結果として日中の眠気や情動脱力発作など症状が改善すると、臨床試験で示されています。
これまでナルコレプシーに対して使われてきた薬(モディオダールや抗うつ薬など)は、いずれも、出てきた症状を抑え込むという性質のものでした。
オーゼイフルは、足りないオレキシンの働きを薬で補おうという、いわば症状の「上流」に働きかける薬です。これまでの薬とは働き方が全く違うので、これまでの治療ではまだ症状が残って困っていた人でも、症状が改善することがあるかもしれません。
副作用としては、臨床試験において不眠症と頻尿が、それぞれオーゼイフルを投与された人の半分ほどに出現しました。しかし中止に至った人は投与群の2.4%と少ないです。
一番大きなデメリットは、薬が高額であることです。薬の量にかかわらず、1日分で約45000円(3割負担だと自己負担額が15000円ほど)かかります。
当然、普通は払える額ではないので、高額療養費制度を使うことになります。この制度を使えば自己負担額が大幅に減りますが、それでも、年収が数百万円の人で年数十万円ほど自己負担していただくことになります。(年収などによって細かく変わってくるので、自分が払う額を確認したい方は加入している健康保険組合に問い合わせましょう)
この薬は、30日分だけ「おためし」することができる場合があります。処方できる基準を満たしているナルコレプシータイプ1の人に対して製薬会社が病院を通して提供してくれる、いわば無料サンプルです(ただし、全ての病院でこの薬の提供ができるわけではありません)。
「使ってみたいかどうか確信は持てないが、一応どんな効果なのかだけでも試してみたい」などと思われるナルコレプシータイプ1の患者さんは、通院中の病院でご相談されてみてはいかがでしょうか。

