昔の自分と同じ睡眠がとれない? それは自然な変化かもしれません 

こんなことは、ありませんか?

中年女性
中年女性

若い頃よりも、夜中に目が覚めやすくなった…

大学生
大学生

中学高校では朝練のため早起きできていたのに、大学の1限目の授業に間に合うのがつらい

ご隠居
ご隠居

退職したらたっぷり睡眠を取ろうと楽しみにしていたのに、長く眠れない

この記事では、年齢によって睡眠は変わっていくものだということを、科学的根拠を踏まえて解説していきます。

このブログを書いた人

木花(もっか)

  • 日本睡眠学会総合専門医 / 睡眠医学の研究者
  • 小さな子から高齢者まで、睡眠障害全般を診ています
  • 若い頃よりも自分が必要な睡眠時間が減ったことは嬉しいけれど、明け方に目が覚めやすくなったことはちょっと嫌です

睡眠の長さと質

まずは、有名な研究からの図を紹介します。

Ohayon MM et al. Sleep. 2004;27(7):1255-1273 [1]より引用、日本語表記に著者改変

これは、5歳から102歳までの明らかな病気のない男女を対象とした65個研究、計3,577名の睡眠データを統合し、一生を通じて睡眠のパターンはどのように変化するのかを示している図です。

こんなことが読み取れます:

加齢に伴う変化

加齢と共に減っていく

  • 総睡眠時間
  • 睡眠効率
  • 徐波睡眠(深い眠り)
  • レム睡眠

加齢と共に増えていく

  • 中途覚醒
  • ステージ1、2の睡眠(浅い眠り)
かめさん
かめさん

つまり、中年に入ったら若い頃よりも夜中に目が覚めやすくなるのは自然な変化なんですね

ひつじさん
ひつじさん

高齢になったら、若い頃ほどたっぷり長い時間眠れなくなることもね

ただし、病気によって睡眠の質が低下している場合もあります。眠りの状態が悪いせいで眠気が出たり集中力低下やイライラが出たりなど、生活に支障が出て困っている場合は、医療機関の受診をおすすめします。

朝型、夜型

朝型か夜型かどうかにも、年齢は大きく関係します。
これまた有名な研究からの図です。

Roenneberg T et al. Curr Biol.2004;14(24):R1038–R1039. [2]より引用、日本語表記に著者改変

このグラフをどう見るかについては、点がグラフの上に置かれているほど夜型、下に置かれているほど朝型だと思ってください。

縦軸のMSFscというのは、自由なスケジュールで眠った時の睡眠の中間時刻(たとえば、0時に寝て8時に起きるなら中間時刻は4時)を、その人ごとに必要な睡眠時間で調整した数値です。

小学生くらいの子どもはだいたい朝型ですが、思春期に入ってから急激に夜型化が進行し、20歳頃に人生で最も夜型になります(上の図を見ると、男性の方がその傾向がより顕著です)。その後は緩やかに夜型が弱まり、高齢になると朝型化する人が多いです。

かめさん
かめさん

だからあさイチの授業がつらい大学生が多いのかな

ひつじさん
ひつじさん

中学や高校の始業時刻を遅らせたら、生徒の睡眠や健康状態、メンタル、交通事故発生率などなど改善するっていう研究報告がいろいろあるんだよ [3]。大学も遅い時間から始まるといいのかもね。

睡眠健康ガイド2023を活用しよう!

厚生労働省による「健康づくりのための睡眠ガイド2023」はご覧になりましたか?(リンク先ページにPDFがあります)

あれは、最新のエビデンスをわかりやすく伝えようとその分野の専門家たちが叡智を結集させた産物で、難易度は大学基礎レベル程度ととっつきやすいので、睡眠医学に興味のある方には是非目を通していただきたい資料です。(なお、最初がとっつきにくくなってますが、専門家でない方なら、資料の8ページ目から先だけ見ればいいです)

なぜいまこれを紹介するかというと、このガイドでは、「成人」「子ども」「高齢者」と、扱う年齢層を明確に区切り、それぞれのライフステージごとのおすすめを分けて論じているからなんです。個人的には、特に高齢者版で、「床上時間を8時間以上にしない」「睡眠休養感を重視しよう」という、少し前までなかった種類のメッセージがエビデンスをもとにまとめられていることが大変興味深いです。

もちろん、まだ高齢ってほどでもないよという方は成人版お子さんのいる方や高校生までの方は子ども版を、ぜひご参照ください!

まとめ

睡眠の質や睡眠時間、朝型か夜型かなど、睡眠にかかわるさまざまな要素が、同じ人であっても年齢と共に変化していきます

中には病気による変化という場合もありますが、日中の生活に支障が出るような睡眠でない限りは、自然な変化という可能性も高いです。自分の睡眠が今どうなっているかを知り、うまく付き合っていきましょう。

参考文献

  1. Ohayon MM, Carskadon MA, Guilleminault C, Vitiello MV. Meta-Analysis of Quantitative Sleep Parameters From Childhood to Old Age in Healthy Individuals: Developing Normative Sleep Values Across the Human Lifespan. Sleep. 2004;27(7):1255-1273. doi:10.1093/sleep/27.7.1255
  2. Roenneberg T, Kuehnle T, Pramstaller PP, et al. A marker for the end of adolescence. Current Biology. 2004;14(24):R1038-R1039. doi:10.1016/j.cub.2004.11.039
  3. ADOLESCENT SLEEP WORKING GROUP, COMMITTEE ON ADOLESCENCE, COUNCIL ON SCHOOL HEALTH, et al. School Start Times for Adolescents. Pediatrics. 2014;134(3):642-649. doi:10.1542/peds.2014-1697