大学受験生の頃に、よく目にしたんですよね。「夜に眠れなくても、横になっていれば体が休まるから大丈夫!」って。
今でも時々Xあたりで、同じような意見を見かけます。
睡眠医学的には、この話は正しいのでしょうか?

結論としては「嘘も方便」

それって、医学的には間違ってる…ってこと?

そう。でも、言う相手によっては、間違ったアドバイスでもないんだ

意味わからない!
というわけで、説明していきます。
- 日頃から不眠で困っている人は、「眠れないのに布団にいる」ことをやめた方が不眠が改善する
- ふだんはよく眠れている人は、たまに眠れない日に布団に居続けるくらいならセーフ。でも、どちらかと言えば布団を出る方がおすすめ。
- 「明日は受験当日、眠れない!」→一生にそう何度もない日の前夜なら、無理に布団を出ることもない
なぜ慢性不眠の人は、眠れない時は布団を出るべきなのか

昨日も眠れなかった。今日も眠気が来ないけれど、眠る時間を稼ぐために、少しでも長く布団にいたい…
これって凄く自然な感情なんですよね。「眠れなかったからこそ、長く布団にいた方がいい」という直感。
一見、正しそうに見えます。
けれども実はここが、不眠を長引かせることになるかどうかの、大きな分岐点だったりします。
眠れないのに布団にいることに、ストレスを感じる人は多いです。そしてそのストレスにより、次に布団に入る時にも「また眠れなかったらどうしよう」という不安や緊張が出やすくなります。

これはすなわち、「寝床」と「ネガティブな感情」が結びついてしまっている状態です。こうなると、眠れませんよね。

自分は寝落ちするまで布団の中でスマホを見て楽しんでるから、辛くはないけど?
そうですね、その場合、寝床が「辛い場所」という認識にはなっていないかもしれません。
ただ、これはこれで問題が出てくるんです。
寝床を「遊ぶ場所」だと脳が認識してしまうので。そうなると、ご本人がつらいかどうかはともかく、寝床で眠りにくくはな ります。


布団に入っても眠れない、でも布団の中で悶々と悩むことも気晴らしをして楽しむことも、不眠改善を考えると良くない、では、どうすれば?

答えはシンプル。布団を、出ましょう!
「まだ眠りが来ないな」と不安やイライラが湧いてきたら布団を出ましょう。そうすれば、ネガティブな感情は布団と結びつきません。

ほんとは良くないとわかってるけど、眠れるまでの時間、ずっとスマホを見ずに過ごすには、夜は長すぎます…

やむを得ずスマホを見るとしても、最低限、寝床からは出よう!
イメージとして、睡眠への悪影響のレベルってこんな感じなんです:
寝床でスマホを見る > 寝床の外でスマホを見る > スマホ以外の手段で、寝床の外で暇つぶしをする
上ではスマホと書いていますが、見るものがタブレットでもSwitchでもパソコンでも話は一緒で、要は「光る画面をじっと見ること」が眠るためはにあまり良くないです。光の刺激によって脳が、「まだ夜ではない」と間違って認識してしまうので。これは長くなるのでまた別の機会に記事を書きます。
だからまあ、寝る前のスマホそのものが良くないのは事実。
とはいえここで言いたいのは、「どうしてもスマホを我慢できないなら、せめて布団から出た状態で使おう!」というところです。それだけでも、寝床でスマホを見る習慣をつけるよりは眠りやすくなるはずです。

眠れなかったら布団から出よう…って、それだといつ、布団に戻ればいいの?

眠くなってから、ですね!
寝床の外で過ごすうちに疲れて、「そろそろ眠れそうかな」という気分になってきたら、布団に戻りましょう。

布団に戻っても、やっぱり眠れないかもしれないじゃない?

「やっぱり眠れない」と思ったら布団を出る、それだけです!

つまり…眠れるまで、布団に入っては出るのを繰り返す、ということ?

そういうことです!
なお、ここまでお話ししてきた「眠れない時は布団を出る」「寝床では、寝ることしかしない」…このような対処法のことを、専門用語では「刺激統制療法」と言います。
不眠症の治療として第一選択と言われる認知行動療法の中でも、核となる要素の一つです。
「眠れない時は布団を出る」…これは直感に反したやり方である上に、いざやってみると言うほど簡単でもなかったりします。その上、初めて最初の数日はかえって寝不足でしんどく場合すらあります。
それでも、長い目で見ればかなりの人が「前よりは眠れている実感を持てるようになった」と感じられるようになる方法なので、実行してみていただければ幸いです。

布団にいる時間が短くなっても、朝に起きる時間は今までと同じにしてね!
「ときどき眠れない」レベルの人はどう対処することがおすすめか
と言うわけでここまで、「眠りにくい日が多くて気になる」人向けの話をしてきました。
では、「眠れない日はたまにしかない」というレベル、基本的には満足のいく睡眠を取れている人も同じようにした方がいいでしょうか?
私の個人的な意見としては、「そりゃ出来れば寝床を出た方がいいけれど、つらいなら無理せず寝床にいてもいいかな」と言うところです。
ポテトチップスは体に良くないけど、健康体の人なら時々ポテトチップスを食べることだってありますよね、というのと似たような感じ。
とはいえ、こんな場合はやっぱり寝床から出ましょう!
- 布団の中にいるとイライラや不安が募ってくる
- 布団の中で、嫌な考えが頭から離れない
- 眠れない日が何日も続いている
受験前夜なら横になっていてヨシ!
ここまで色々書いては来ましたが…
明日に大きな試験が控えていたりとか何か大事なイベントがあって眠れない、そんな人に関する私の個人的な考えはこうです:

眠れなくても横になっていてヨシ!
なぜなら、「眠れない時には布団を出ないと良くない!」というここまでの話は、中長期的に、急性不眠を慢性不眠にしないため、慢性不眠をこれ以上こじらせないためのものだからです。
目の前の一晩のことについて言えば、目をつむって横になって過ごすことで、そりゃ目を開けて起き上がっているよりも少しは睡眠時間を稼げるかもしれません(だからといって主観的に満足な睡眠につながるかどうかは、また別の問題ではありますが)。
だから、受験のような、何年かに1回レベルでの大きな出来事の直前ならば、たとえ眠れなくても横になっていいんじゃない? と私としては思います。

一生の内そう何回もないレベルの大事な日の前夜限定ってところがポイントです!
もちろん、「眠れないなら布団を出ることがもう習慣なので、受験前夜でも眠れなければ起きます!」という人は、それはそれで問題ありません。
まとめ
というわけで、医学的には、「眠れない時には布団を出る」、これが大正解です。これを徹底することによって、不眠を慢性化させずに済んだり、いったんは慢性化した不眠を改善させられたりします。
ただし、医学的な正解だからといって、人生を一番ハッピーにするやり方とは限らないと思うんですよね。
ふだんは不眠に困っている自覚のない人や一生に一度レベルの重大イベントの前夜で、眠れなくても横になっている方が楽だったり安心できたりするなら、それでいいんじゃないかというのが、私の個人的な考えです。
以上、少しでもご参考になれば幸いです!

