カフェインは、覚醒作用のある身近な薬物です。
うまく使えば得をします。逆に言えば、使い方を間違えたばかりに損をすることもあります。
快適な睡眠・覚醒ライフを送るために役立つカフェインの使い方について、今回は、最低限の基礎知識をお伝えいたします。
この記事の次に実践編も書きますので、よろしくお願いしますね!
なお本記事では、カフェインの効果について、あくまで睡眠・覚醒関係への影響のみに話題を絞らせていただきます。
木花(もっか)
- 日本睡眠学会総合専門医で研究者です
- 病気というほどでもないものの、日中に眠くなりやすい&中年になってからは夜に不眠になりやすい方です
- 眠気対策として大学生の頃にカフェイン乱用気味でしたが、何も考えずに使うと結局居眠りしてしまうことに気がつきました
なぜ効くか
カフェインは、アデノシンの働きを阻害することによって、薬理作用を発揮します。
アデノシンとは、生き物の体内に普遍的に存在する物質のひとつです。体のあちこちで様々な働きをし、中枢神経においては神経活動を抑制して眠気をもたらす作用をもちます。
だから、アデノシン受容体をブロックする働きを持つカフェインが、眠気を抑える作用を発揮することになるのです。

ちなみに一般的に、飲み物に含まれるカフェイン量の目安は、コーヒー100mlあたり60mg, 紅茶100mlあたり30mg, せん茶や烏龍茶100mlあたり20mgくらいです。(「健康づくりのための睡眠ガイド2023」より)
どれくらい効くか

コーヒーを飲んでも眠くなるって言う人だっているじゃない?

そこは、カフェイン連用による耐性とか単純に眠気が強すぎるとか推測されるところではありますね!
でも、過酷な状況においても、使い方によってはカフェインは効くんです。
ここで、米陸軍の研究機関が2005年に出した論文を紹介します(戦場では眠るどころではない状況も起こるので、こうした研究の需要があるのでしょうね)[1]
対象:48人の若い健康な成人(男性38人、女性10人)。
何をしたか:64時間(!)連続覚醒させたあとに、あらかじめ4群にわけていた被験者に以下のいずれかを投与し、さらに21時間連続覚醒させた。
投与された薬剤:
- カフェイン600㎎(コーヒーで言うと約1L分と、なかなか大量です)
- デキストロアンフェタミン20mg (外国では医療用として使われることもある薬剤ですが、日本では覚醒剤取締法上の覚醒剤として規制されています)
- モダフィニル400mg (ナルコレプシーなどの病気による眠気を減らすためよく使われる薬剤ですが、日本で処方できるのは1日300㎎までです)
- プラセボ
被験者たちは連続覚醒させられている間、2時間おきに様々な検査を受け、覚醒度を測定しています。
そこからわかったのは、どの薬もプラセボと比較すると投与後数時間は覚醒度が改善しており、しかも、投与2時間~4時間後の時点では、カフェイン投与群の覚醒度は他2剤と大きくはかわらなかったということです。(ただし、カフェインの方が早く効果が切れるようではあります)
つまり使い方によっては、極端な状況での眠気すら、カフェインは改善させるポテンシャルがあります。

えらく過酷な条件下で、ハードな薬と比較されてますねえ。それでも行けると示されたわけだ

ただし、カフェイン600㎎となると、1日あたりの推奨上限400㎎を軽く突破していますし、すでにカフェインに耐性がついていたら思ったように効かなかったり、健康状態や年齢、他の薬剤との相互作用によって思わぬ副作用が出たりするおそれもありますから、この結果を見て安易に真似しないでくださいね…
他にも、「ここまででなくとも、睡眠不足の人にカフェインを投与するとその後の眠気が明らかに減る」ということを示した研究はたくさんあります [2]。
ただし、連日カフェインを摂り続けていると、効果は減っていきます、その話はこの記事の後半で。
カフェインの副作用
本来なら全身のあちこちで働くはずのアデノシンの働きをカフェインが弱めるので、単に眠気だけ減るというわけにはいきません。
大事そうなところをかいつまんで説明しますと…
まず、睡眠に関して特に問題となる副作用は、不眠です。目が覚める薬物が寝る時間になっても体に残っていたら眠りにくくなる、当たり前体操ですね。これに関しては後でさらに説明します。
危なくはないタイプの副作用ですが、利尿作用が個人的には生活面で地味に困ります。
カフェインが不安の引き金になることなんかもありますね。
また、多量に摂取することで嘔吐や下痢、頻脈などを来す可能性があります。血圧を上げるという話も。
重大な副作用としては一度に多量に摂取することで痙攣が生じる場合もあります。
カフェインの大量摂取で死亡した症例は本邦でも報告されていますし [3]、身近な物質だからと言って常軌を逸した量を摂り続けるのはさすがにまずいです。

なお上記の症例報告を読むと、亡くなった方は、夜勤明けに活動し夕方に眠ってからまた夜勤に向かうという、慢性的な睡眠不足が推測される生活を送ってました。
半減期の話:たくさん摂れば影響が残る、遅くに摂っても影響が残る
お酒を飲んだら数時間体に影響が残るように、一度摂ったカフェインはそれなりに長時間体に残ります。
そして、目を覚まさせる働きのあるカフェインが体に残っていると、そのせいで睡眠が妨げられる可能性はあるわけです。
どの程度の時間カフェインが体に残るか考えるには、半減期についての知識が役に立ちます。
この場合の半減期とは、「体内に入った薬の血中濃度が、代謝や排泄などによって半分に減るまでにかかる時間」のことです。
カフェインの半減期は、かなり個人差が大きいです。つまり、すぐに体からカフェインが抜ける人もいれば、長時間残る人もいる。欧州食品安全機関 (EFSA)が2015年に公表した「カフェインの安全性に関する科学的意見書」 [4]ではカフェインの半減期は2~8時間(平均4時間)としています。
例えば半減期が平均的に4時間の人だとしたら、もし朝7時に200mg(コーヒーならカップ2杯ほど)のカフェインを取った場合、4時間後に体に残るカフェインは100㎎相当、8時間後だと50㎎相当、12時間後の夜19時で25㎎相当ということになります。

同じ200㎎でも、摂ったのが午後3時である場合、午後11時にまだ50㎎相当のカフェインが体に残ります。
もし摂る量が400㎎だったら、摂取が朝11時であったとしてもやはり午後11時に50㎎相当のカフェインが体に残ります。
まあ要するに、「たくさん摂れば遅くまで影響が残る、少量摂るのでも時刻が遅ければ影響が出る」ということです。
たくさん摂るほど、夜の睡眠に響きやすい
カフェインと睡眠の関係を見た研究は色々あります。上に書いたように人によってカフェインへの反応にだいぶ違いがあることも手伝ってか「この量だとこの反応!」とがっちり決まっている感じでもありませんが、多く摂るほど夜の睡眠にとってよろしくない結果となる傾向はあります。
Gardinerらは、2025年にこんな研究の論文を出しました [5]。
対象:平均年齢25.3歳の健康な男性23名
何をしたか:3週間ほどの実験期間で、同じ被験者に、48時間ほど実験間隔を空けながら複数の条件を順番に経験してもらいました。100mgもしくは400㎎のカフェイン、もしくはプラセボをそれぞれ就寝12時間前、8時間前、4時間前のどこかで摂取させ、その後の睡眠を測定するというものです。
結果:カフェイン100㎎の場合は、就寝4時間前の摂取でも睡眠に対する有意な影響は認められませんでした。
一方、カフェイン400㎎の場合は、就寝12時間前の摂取でも、プラセボと比較して深睡眠が平均20.6分減りました。

じゃあ、間をとって200㎎の摂取だとどうなるんですか?

データがないのでわかりませんが、日常的な摂取量であるだけに気になるところですよねえ
さて次は、カフェイン摂取量が200㎎だからという理由でピックアップしたわけではないんですが、結果的にそうなりました。
Landoltらによる1995年の研究です [6]。
対象:9人の健康な若い男性(平均年齢 22.4歳)
何をしたか:朝7時10分にカフェイン200mgの入ったカプセルを飲んだ。
結果:その夜に寝る直前、22時55分に採取した唾液から検出されたカフェインはわずかな量のみでした。にもかかわらず、その晩の睡眠時間がカフェインをまったく摂らなかった日と比較して総睡眠時間が平均10.0分減り、寝付くまでの時間も平均10.8分延長していました。また、脳波パワースペクトル密度にも変化が見られました。

ほう、カフェイン200㎎でも15時間半後の睡眠に影響が出るんだ!

ひとつ前に紹介した研究とは手法が違うから単純な比較はできないけどね
推奨は1日あたり400㎎まで、だけど
さて、ここで、厚生労働省による「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 [7]を見てみましょう。
1日のカフェインの摂取量合計は400mgを超えないようにしましょう
とはいえ、ここまで説明してきた通り、400㎎より少ない量でも、特に就寝間際に摂れば睡眠に影響が出る可能性は高いわけで、400㎎上限を護っていれば必ず大丈夫とは言えません。
また、400㎎という量は、健康な成人を対象として決められた基準なので、そこにあてはまらない人、例えば睡眠障害がある人が400㎎に同じ基準が適用できるかどうかも、今まで出ている研究からは判断する材料が不十分です。
なお、以下は特に注意が必要な集団です。
高齢者:カフェインの代謝が落ちます。
妊婦さん:カフェイン半減期が非妊娠時よりも延長します。
子ども:体重あたり1mg~3mg/kg (体重30kgなら3mg/kgで90㎎)を超えるカフェインをとると睡眠に影響が出ると言われています。
400㎎は、あくまでひとつの目安ということです。
毎日同じ量を使うと効かなくなる:耐性の話
カフェインを効果的に使うためには、耐性について知ることも重要です。
カフェインを毎日続けて摂ると、耐性がついて効かなくなっていくことがわかっています。
例えば耐性の結果として、夜の睡眠に対するカフェインの悪影響が減ってくると報告している研究があります [8]。まあこれだけなら別に悪いことじゃないですね。
問題は、カフェインが日中の眠気を抑える効果も、カフェインを連日使うことによって抑制されてくる場合です。
Weibelらは、2020年に出した論文で、1晩8時間ベッドにいるという、睡眠時間は取れている前提の条件で以下の条件を比較しました [9]:
- 10日間1日450㎎のカフェインを摂り続けた場合
- 10日間プラセボを摂り続けた場合
- 最初の8日間は1日450㎎のカフェイン、最後の2日はプラセボを摂らせた場合
20人の健康な男性の被験者が、それぞれ上記全部の条件を経験した形です。
その結果、9日目の測定では、主観的な眠気と客観的な眠気はどちらも、カフェインを摂り続けた場合とプラセボの間で有意な違いは認められませんでした。8日間カフェインを摂り続けたのに急にプラセボになった場合だけが、どちらの眠気も増えていました。
つまり、カフェインを摂り続けていると、摂っていない時と結局眠気の違いがなくなってしまうみたいなんですね。(しかも、急にやめるとむしろ眠気がきつくなる)
カフェインを単回投与する条件の実験ではおおむね良好に眠気が抑制される [2]のに、あまりにも結果が変わってきます。
この違いが耐性から来るものではないかと推測されるわけです。
実社会での使い方に近い条件での実験
さらに、ふだんの生活に近い条件でのカフェイン連日投与についても見てみましょう。Dotyらが2017年に出した論文です [10]。
18〜39歳の健康な成人48名(カフェイン群24名、プラセボ群24名)
まずは、5日間、カフェインやアルコールを禁止した上で1日10時間被験者たちをベッドに入らせ、その状態でのパフォーマンスを測定しました。
その次の晩から5日間連続で、ベッドにいられるのは一晩5時間までとして、現実世界での睡眠不足に似た状況を作りだしました。その間、カフェイン群の人達には、朝8時に200㎎、昼200㎎のカフェインを摂らせています。
さらにその次の3日間は、カフェインは無しとし、一晩8時間ベッドに入れるようにし、回復睡眠をとれるようにしました(5日間働いたあとの3連休みたいですね!)
最初の2,3日は、カフェインを投与された群の方が、注意を維持する力や、暗い部屋でじっとしていても眠らないでいる力は保たれていました。すなわち、カフェインを摂ってる方が客観的な眠気は弱い状態でした。
しかし、4,5日目には、カフェイン群とプラセボ群で、その差はなくなりました。
そしてカフェイン投与終了後の回復期間には、3日間ともカフェイン群の方が、プラセボ群より客観的な眠気が強いという結果でした。

つまり、せっかくカフェインを摂って頑張ろうとしたのに、数日で効きが鈍る上に、カフェインをやめた時にかえってつらくなっちゃう
他の似たような研究 [11]とも比べてみると、このような共通点がありました。
- 睡眠制限を何日も続けると、カフェインを飲んでいても主観的な眠気(自覚している「眠いな」という感覚)はカフェイン抜きと同じように蓄積する。
- 客観的な眠気に対して、最初の3日くらいはカフェインは効果があるが、その後はあまりカフェイン抜きと違いがなくなる。
- 覚醒を保つ力や集中力など、測定される能力によって、どの程度カフェインの効果が続くかは異なる。

まあつまり、睡眠不足が続いているのにカフェインを使い続けても、睡眠不足は帳消しにできないよ…という感じ

同じ量だと効きにくくなるなら、どんどんカフェインを増やせばいいんじゃない?

副作用が出やすくなるし、離脱症状もよりきつく出るよー
カフェインの摂取量を増やすほど、いざ抜いた時の離脱症状が出やすくなります。症状としては、頭痛や倦怠感、眠気が代表的です。[12]
まとめ
- カフェインを単回摂取する研究では、強力な覚醒効果が観察されている。
- 1日あたりのカフェインの推奨摂取上限は400㎎までとされているけれど、摂る時間帯によってもカフェインの残り具合は異なってくる。
- 睡眠時間が足りない状況だと、連日カフェインを摂っていても3日程度で客観的な眠気に対する効果が鈍ってくる。
- カフェインが抜ける時に離脱症状が出ることも忘れないで。
さて次の記事では、これらの知識をもとに、「では実際に日常生活で何を心がけてカフェインを使うと便利か?」という話をしていきたいと思います。
参考文献
- Wesensten NJ, Killgore WDS, Balkin TJ. Performance and alertness effects of caffeine, dextroamphetamine, and modafinil during sleep deprivation. Journal of Sleep Research. 2005;14(3):255-266. doi:10.1111/j.1365-2869.2005.00468.x
- Irwin C, Khalesi S, Desbrow B, McCartney D. Effects of acute caffeine consumption following sleep loss on cognitive, physical, occupational and driving performance: A systematic review and meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews. 2020;108:877-888. doi:10.1016/j.neubiorev.2019.12.008
- 高山みお, Waters B, 原健二, 柏木正之, 松末綾, 池松夏紀, 久保真一. カフェイン飲料・製剤の過剰摂取によるカフェイン中毒事故の1剖検例. 日本アルコール・薬物医学会雑誌. 2016;51(3):228-233.
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on the safety of caffeine. EFS2. 2015;13(5). doi:10.2903/j.efsa.2015.4102
- Gardiner CL, Weakley J, Burke LM, et al. Dose and timing effects of caffeine on subsequent sleep: a randomized clinical crossover trial. SLEEP. 2025;48(4):zsae230. doi:10.1093/sleep/zsae230
- Landolt HP, Werth E, Borbély AA, Dijk DJ. Caffeine intake (200 mg) in the morning affects human sleep and EEG power spectra at night. Brain Research. 1995;675(1-2):67-74. doi:10.1016/0006-8993(95)00040-W
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- Reichert CF, Deboer T, Landolt H. Adenosine, caffeine, and sleep–wake regulation: state of the science and perspectives. Journal of Sleep Research. 2022;31(4):e13597. doi:10.1111/jsr.13597
- Weibel J, Lin YS, Landolt HP, et al. Caffeine-dependent changes of sleep-wake regulation: Evidence for adaptation after repeated intake. Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry. 2020;99:109851. doi:10.1016/j.pnpbp.2019.109851
- Doty TJ, So CJ, Bergman EM, et al. Limited Efficacy of Caffeine and Recovery Costs During and Following 5 Days of Chronic Sleep Restriction. Sleep. 2017;40(12). doi:10.1093/sleep/zsx171
- Baur DM, Lange D, Elmenhorst EM, et al. Coffee effectively attenuates impaired attention in ADORA2A C/C-allele carriers during chronic sleep restriction. Progress in Neuro-Psychopharmacology and Biological Psychiatry. 2021;109:110232. doi:10.1016/j.pnpbp.2020.110232
- Juliano LM, Griffiths RR. A critical review of caffeine withdrawal: empirical validation of symptoms and signs, incidence, severity, and associated features. Psychopharmacology. 2004;176(1):1-29. doi:10.1007/s00213-004-2000-x
