よりよい睡眠と覚醒のためには、カフェインをうまいこと使えると便利です!
というわけで、実践編です。
基礎知識編はこちら↓
木花(もっか)
- 日本睡眠学会総合専門医で研究者です
- 病気というほどでもないものの、日中に眠くなりやすい&中年になってからは夜に不眠になりやすい方です
- ふだんは、週に6日ほど1日あたり30㎎~100㎎程度のカフェインを摂っているというパターンが多いです。
いま現在睡眠で困っていない人
いま現在睡眠で困っていないという人なら、カフェインの摂り方を敢えて変える必要性は乏しいです。
厚生労働省による「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 [1]で書かれているように、1日摂取量上限(成人なら400㎎)を守り、夕方以降は摂取しないということを心がけていただければ十分かと思います。
その上で、強いて言えば心がけていただきたいのは以下のことです。
私が思うに、カフェインって「積極的に摂る場合」と「消極的に摂る場合」があるんですよね。
具体的にはこんな感じです。
- 眠気を覚ましたい時に飲むコーヒー
- カフェインの味が好きという自覚があって摂るコーヒーやお茶
- せっかく来たアフタヌーンティーだから伝統的なお茶を飲みたい
- 少しでもしゃきっとしたくて、カフェイン入りの風邪薬を飲む
- 毎朝の習慣として飲むコーヒー
- 水分補給目的でジャスミン茶を毎日作って冷蔵庫に入れている
- 出先で配られたペットボトルが緑茶
- ソフトドリンク飲み放題で、他が甘い飲み物ばかりだったので烏龍茶を選んだ
- 成分を見ないで買った風邪薬にカフェインが入っていた
後者だと、たいていは、敢えてカフェインを摂る必要のない状況だと思われます。こういう時に可能ならカフェイン以外の選択肢をとるだけでも、カフェインを体に入れることをかなり避けられます。

どうして、必要のないカフェインを摂らない方がいいの?

「睡眠の質が悪くなるリスクが増える」
「カフェインに体が慣れると、いざ効かせたい時に効きにくくなる」
「むやみにカフェインをとると、抜けた時の離脱症状がきつくなる」
の3点ですね!

いちいち、「このカフェインを摂るべきかどうか」なんて自問するのも面倒くさいですよ
そんな人には、とりあえず、「水分摂取用の飲み物はカフェイン抜きにする」ことをお勧めしたいと思います。
- いつも水筒に入れて持ち運んでいる飲み物
- 家の冷蔵庫に常備している飲み物
- 夏にだらだら汗をかきながら、出先の自販機で買い求める飲み物
水分摂取目的となると、それなりの量を飲むことになります。たとえば緑茶を1L飲むとして含まれるカフェイン量は200㎎くらい。理由もなくとるカフェインとしてはそれなりの量です。その結果として睡眠の調子が悪くなったり、いざという時のカフェインの効きが悪くなるのだったら、もったいないと思うのですね。
- 水
- 麦茶
- ルイボスティー
- ハーブティー全般
- 「ノンカフェイン」「デカフェ」「カフェインレス」を明示しているお茶やコーヒー

最近、カフェイン抜きかつ甘くもないドリンクを選べるカフェや夜のパーティが増えては来ましたが、この選択肢がもっと当たり前になるといいなと思います。
不眠で困ることが多い人
さて、不眠障害の人や、病名がつくほどでもないけれども不眠で困ることが時々あるという方の場合は、このあたりが落としどころの目安ではないかと個人的には考えます。
カフェインは1日につきコーヒーで1,2杯程度、遅くてもおやつの時間には終わらせる
以下、そう考えるに至った理由の説明です。
基礎知識編でも説明しました通り、カフェインを摂ると、寝付きが悪くなったり、夜間の覚醒が増えたりしがちです。
また、カフェインはレストレスレッグス症候群の症状を悪化させるとも言われています [2]。
さらに、通常の就寝3時間前にカフェイン2.9mg/kg (体重50㎏の人だと145mg)を与えた場合に、メラトニン分泌のリズムが、プラセボ摂取の場合よりも約40分ほど後ろにずれたという実験結果があります [3]。要するに、夜にカフェインを摂ることが、体内時計の夜型化を助長するおそれもあります。
そんなこんなで、夜の睡眠を妨害する要素をカフェインはいろいろと備えているというわけです。
とはいえ、不眠がある人がカフェインをやめさえすれば必ず不眠が改善するかというと、その証拠は確立していません。
不眠で悩んでいる人にカフェイン制限をかけた研究というのはいくつかあるものの、「効果あり」とする研究と「やめても変わらない」とする研究が混在しています [4,5]。しかも、研究の数自体が少ないです。現時点では、一定の結論を出すことのできない状態です。
なぜカフェインをやめても不眠が改善する傾向がはっきりしないか。個人的な意見ですが、基礎知識編でも述べているようにカフェインを常用していると耐性が生じるため、毎日同じ程度のカフェインを摂っているとそのことによる睡眠への影響が出にくくなる、ということが一つの理由なのかもしれません。
あと、カフェインが効きやすい体質の人はその自覚があり最初からカフェインを避けているので、習慣的カフェインユーザーとしてピックアップされにくい、という説もあります。
連用によって耐性が付こうが、中止による不眠改善のエビデンスがはっきりしてなかろうが、カフェインが覚醒作用のある物質であることは事実なので、不眠で凄く困っているならば極力摂らない方がいいのではない? と個人的には思っています。
一方で、カフェインは我々の文化に深く根付いています。外で飲食したり、訪問先でお茶を出してもらったりするときにカフェインを避けるのは難しいものです。味の好みとしてカフェイン飲料が好きな人も多くいることでしょう。徹底してカフェインを避けることで日々の生活における幸福度が下がるならば、それはそれでよくないことです。
そういうわけで、不眠の人におけるカフェインとの向き合い方として、私からお勧めしたいのは以下の3点です:
- まったくカフェインを摂らない日を連続で2週間程度設けて、睡眠がよくなるかどうか観察する。
- その結果、カフェインの睡眠に対する影響はない、もしくは軽いと結論づけられたとしても、日頃のカフェイン摂取量は推奨上限より低めに、200mg程度(コーヒーでいうと2杯程度)にしておき、おやつの時間頃までには飲み終える。
- カフェインは睡眠に影響しないと判断した場合でも、不眠が悪くなった時はカフェインを減らす方向で調整する。
以上、ご参考になれば幸いです。

カフェインが200㎎程度が良い、と言ったけど、その量の根拠は何かあるの?

ないです、すみません! 強いて言えば、「400㎎というのは健康な成人における安全性の上限なのだから、睡眠に問題のある人ではもっと慎重になった方が良いのでは?」という疑念からです。
日中の眠気を減らすためにカフェインを使う場合
私自身、眠気を減らすことを目的として日常的にカフェインを使っている身です。この問題に個人的に取り組み始めてから、かれこれ20年。
その経験と科学的知見から、眠気を減らすためにどうカフェインを使うかについてのお勧めは、ざっくり以下の通りです。
- 用事のある日は、眠気を除去できる最低限の量だけ、カフェインを摂取することを心がける。
- 目を覚ましておく必要のない日には、極力カフェイン摂取量を減らす、可能なら休む。
- どうしても起きておかないとまずい場合(例:重要な会議、疲れている状況での運転)には、一時的にいつもより多量のカフェインを摂ることは許容される。ただし、原則として1日だけにとどめること。
どうしてこのような運用を推奨するかというと、ひとえに「効かせたい時に確実に効かせ、眠気を覚ます」ためです。
より詳しく説明します。
カフェインを多く摂るほど、眠気は減りやすくなります。それだけでなく気分が高揚したりとポジティブな効果も出ます。
しかし落とし穴は、「同じ量でカフェインを連用すると、眠気を減らす効果はたった数日で落ちていく」ことです。
基礎知識編からのおさらいですが、睡眠時間を5時間程度までに制限する実験で連日400㎎カフェインを摂っていた群では、実験開始からの3日ほどはプラセボ群よりも客観的な眠気が弱まったものの、4日目以降は、プラセボ群と変わらなくなっていました [6]。他の似たような実験でも同様です。毎日カフェインを続けると、たちまち同じ量では効かなくなってしまうのです。

同じ量だと効かなくなるんなら、段々量を増やせばいいんじゃない?

確かにそれはアリなんです。ただ当然、それだと、際限なく摂取量が増えてしまうので、どこかで食い止めないといけません。
つまり、週の初めには最低限の量から始めて、週末にかけて徐々に増やし、休日にいったんカフェインを休んでリセットを試みる、というのが合理的な解法なのではないかと考えます。(ただし、たった1日休むだけでは元通りにはならないはずです。可能な時にはもっと長期間休むことが望ましいでしょう)
日頃摂っているカフェインの量が増えるほど、「いったん休む」際の離脱症状(倦怠感や頭痛、眠気)が大きくなるので、そういう意味でもカフェインの摂取は目的達成のための最小限にとどめることが安全策です。
以下、エビデンスもへったくれもない私個人の生活と意見です(というわけで折りたたみます)。
最近の私は、外来診療のある日かつ週の前半には70㎎程度(インスタントコーヒー1杯)のカフェインを朝にとり、後半になるにつれて増やしていき、長距離運転+外来のある土曜日には120㎎くらい(ドリップコーヒー1杯+緑茶1杯)摂る、という感じの運用をしています。
外来診療の無い日には20~50mg程度のカフェイン摂取にとどめ(紅茶や緑茶)、休日は0~20㎎程度のカフェイン摂取(ほうじ茶や少量の紅茶、もしくは最初からノンカフェイン茶)として、なるべくカフェインを休みます。
(前日の睡眠時間や集中したい度合いなどによって多少変動します。また、1日デスクワークの日でも「ここが山場や!」という場合はコーヒーでテンション上げたりもします)
このように基本は節制していますが、出張明けで疲れているけれど空港から自宅まで運転しなきゃというような場合には運転の1-2時間前にコーヒーショップの濃いコーヒー(190㎎くらい)をとったりもします。たまにはそういうものを飲むのも楽しいですしね。
逆に「最近疲れていて睡眠で休めている感じが乏しいな…」と感じる時期には、意識的にカフェインを数日間減らすこともあります。休んだ分、体調がしんどくはなりますが、無理をせず休養優先で乗り切ります。
ひとりひとりのカフェイン感受性や眠気の程度によってどうカフェインを摂るかの最適解は異なってくるわけですが、ひとつのご参考となれば幸いです。
過眠症と診断され薬を飲んでいる人
すでにナルコレプシーや特発性過眠症の病名がついていてモディオダールなど覚醒を促す薬を服用している人の場合は、カフェインについてどう考えれば良いでしょうか?
絶対の正解があるわけではありませんが、私個人の見解を申し上げますと、
過眠症の薬を飲んでいない人と同様に、普通に使ってヨシ!
です。
なぜそうなるのか説明します。
以前より使われてきたモダフィニル(商品名モディオダール、以下同様)やメチルフェニデート(リタリン)、ペモリン(ベタナミン)から、最近登場したオベポレクストン(オーゼイフル)やピトリサント(ウエキクス)に至るまで、過眠症治療薬はどれも、カフェインを併用禁忌もしくは併用注意として添付文書に記していません。
薬剤の作用機序的にもぶつかり合いません。カフェインはアデノシン受容体をブロックする薬。モダフィニルやメチルフェニデート、ペモリンはドパミン系に働きかける薬、オベポレクストンはオレキシン2受容体選択的作動薬、ピトリサントはヒスタミンH3受容体拮抗薬・逆作動薬です。要するに薬の働きかける場所が違います。

ただし、覚醒度を上げるという働きは共通している以上、重ねがけをすることで不眠や頻脈など共通する副作用が余計強くなるという可能性はあります。
というわけで、過眠症とすでに診断がついておりそれに対する薬を処方されている人でも、カフェインを使うことに原則として制限はないと考えます(もちろん個別に事情は異なってくるので、診療している医師と私の見解が異なってくる場合には診療医の意見を優先してください)。
上に書いて来たことも踏まえていただいて、不眠が気になるようなら摂り過ぎない、眠気をあとちょっと減らしたい用途でカフェインを使うなら日頃から体に入れるカフェイン量に気を配る、そんな感じでよろしいのではないかと思います。
まとめ
カフェインは美味しい上に便利な薬物ですが、それだけに気軽に摂り過ぎてしまいやすいです。
- 意味なく摂り過ぎないように気を付ける
- 不眠が気になるなら減らしてみる
- 眠気を減らしたいなら、摂取量は必要最低限に
以上、覚えておいていただければ幸いです!
参考文献
- 厚生労働省. 健康づくりのための睡眠ガイド2023. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
- Winkelman JW, Berkowski JA, DelRosso LM, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2025;21(1):137-152. doi:10.5664/jcsm.11390
- Burke TM, Markwald RR, McHill AW, et al. Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and in vitro. Sci Transl Med. 2015;7(305). doi:10.1126/scitranslmed.aac5125
- Sin CW, Ho JS, Chung JW. Systematic review on the effectiveness of caffeine abstinence on the quality of sleep. Journal of Clinical Nursing. 2009;18(1):13-21. doi:10.1111/j.1365-2702.2008.02375.x(Sin 2009,
- Irish LA, Mead MP, Cao L, Veronda AC, Crosby RD. The effect of caffeine abstinence on sleep among habitual caffeine users with poor sleep. Journal of Sleep Research. 2021;30(1):e13048. doi:10.1111/jsr.13048
- Doty TJ, So CJ, Bergman EM, et al. Limited Efficacy of Caffeine and Recovery Costs During and Following 5 Days of Chronic Sleep Restriction. Sleep. 2017;40(12). doi:10.1093/sleep/zsx171

