なんで私が夜型に? ~遺伝と環境の相互作用~

「朝8時半には必ず集合」
このような取り決めにドキドキしたことのある人も、多いのではないでしょうか。
問題は、そう、集合時間に間に合うよう朝にちゃんと起きられるのか――

そういう経験のないあなたでも、
「なんであの人はいつも朝に遅れるんだ?」
そんな風に不思議になる仲間なら、身近にいたりしませんか?

この記事では、そのように朝が苦手な「夜型」の人を理解するために大切な「なぜ夜型になるのか」という話をしていきます。

この記事を書いた人

木花(もっか)

  • 日本睡眠学会総合専門医
  • 朝起きられず困っている若い人を、これまで数百人ほど診てきました
  • 自分自身のクロノタイプは、中間型寄りの朝型です。

そもそも「朝型」「夜型」って?

時間生物学的な考え方からは、人間は、朝型・夜型・中間型のどれかに分けられます。この型のことを、クロノタイプと言います。

  • 朝型:早寝早起きで、早い時間帯の方が元気に活動できる
  • 夜型:遅寝遅起きで、遅い時間帯の方が元気に活動できる
  • 中間型:どちらでもない(一番多い)

自分のクロノタイプが気になる人は、ネットで受けられて自動採点してくれるこちらの「朝型夜型質問紙」をやってみましょう。[1] 
(もともとは国立精神・神経医療センターのサイト内にあった質問紙ですが、携わった先生の異動に伴い今は秋田大学に置かれているようですね)

ちなみにこれが、私自身の判定結果です。

二日前に同じテストを受けた時はたしか58点で中間型判定されたんですが、少しだけ答えを変えたら今日は59点とギリ朝型になりました。そんな感じで、同じ人が受けても状況によって多少点数は変動します。

ここで見ていただきたいのは、分布がきれいな山の形を描いていることです。最も人数の多いエリア、圧倒的多数が中間型です。朝型はそこそこいるけれど夜型は少なく、そして超朝型と超夜型はいずれも少数派です。

朝型か夜型か、それを決めるもの

では何が夜型になるかどうかを決めるのか? 半分ほどは、遺伝の影響です。

遺伝の影響

遺伝の影響を調べるためには、双生児研究がよく行われます。双生児研究とは、一卵性双生児(遺伝子がほぼ同じ)と二卵性双生児(遺伝子が半分ほど共通)で性質の似方を比べることで、その性質にどれくらい遺伝の影響があるかを調べる研究です。

ここで紹介する研究に参加したのはフィンランドの双子8,753組。遺伝子がほぼ一卵性(2,836組)、と遺伝子が半分ほど共通している二卵性(5,917組)です。

その結果わかったのは、朝型・夜型の個人差の約半分(49.7%)が遺伝によって説明できるということでした。この割合は、年齢や性別によって変わることはないとも著者たちは言っています [2]。

かめさん
かめさん

クロノタイプの半分は遺伝によって決まることはわかった。他は、何によって決まるの?

ひつじさん
ひつじさん

環境と行動ですね~

遺伝以外の要因

これも重要な話なのですが、詳しく解説するとかなり長くなるので、いずれ別の記事に書ければと思います。

クロノタイプに影響しやすい要因の例
  • 光の浴び方の習慣
  • 学校や仕事のスケジュール
  • いつ食事をとるか、カフェインやアルコールをどうとるか
  • 身体的・精神的な病気
ひつじさん
ひつじさん

このあたりは、自分の行動次第で変えられるかもしれない部分だよ

かめさん
かめさん

でも現実問題、学校や仕事のスケジュールって変えにくいよね…

ひつじさん
ひつじさん

遅い時間の始業が当たり前になれば、楽になる人が増えるはずなんだけどね

若者は夜型になりやすい

よく知られていることとして、年齢もクロノタイプに影響します

これはこれで詳しい説明をすると長くなるので、ここではざっくりと説明します。

  • 多くの人は、10歳頃は朝型であるが、思春期に入ると急激に夜型化が進行する。
  • 夜型化は、20歳頃にピークに達する。
  • その後はじわじわと夜型がやわらぎ、3-40歳頃にはそう極端ではなくなってくる。

参考:Roenneberg T, Kuehnle T, Pramstaller PP, et al. A marker for the end of adolescence. Current Biology. 2004;14(24):R1038-R1039. doi:10.1016/j.cub.2004.11.039 [3]

なぜそうなるのかについてまだはっきりと分かってはいませんが、学業などスケジュールの影響やスマホなどのデバイスの影響もさることながら、光に対する体内時計の反応が思春期前と変わる、連続して起きておける時間が長くなる、など体側の要因の方が重要であるようです。
つまりこれまた、本人の努力だけでどうにかできることではなかなかありません

まとめ

「だいたい半分は遺伝、残りは環境」:この意味するところって、つまりはこういうことです。

夜型や朝型を中間型に近づけたい場合に、努力でどうにかなる部分はある。

でも、努力だけでどうにもならない部分もある!

努力でどうにかなる部分はある程度あるから、夜型で困っている人は、一度は生活習慣を見直してみることがおすすめです。うまくハマってするりと良くなる場合も少なくないからです。

しかし、物凄く本人や家族が頑張ったとしても、朝の予定に間に合うよう起きられることがどうしても続かない人はいます。ちなみにここで厄介なのが、「凄く頑張れば、短い期間なら早起きできる場合もある」ということです。すると、周囲の人からは「頑張ればできるじゃないか、普段は頑張りが足りていないだろう」という目で見られやすい。

勝手ながら想像するに、起きられない人を白い目で見る人自身は少しの頑張りで起きられるから、起きられない人にはその頑張りすら足りていないように思えるのでしょう。しかし実際のところは、すんなりと起きられる人からは想像もつかないほどの頑張りと苦痛が、夜型の人が無理に早く起きるためには必要なのです。

なお、早起きさえできれば良いという問題でもなくて、夜型で遅くまで眠れない人だと、仮に毎日朝早く起きられていたとして、今度は睡眠不足でボロボロになっていたりします

とは言え、夜型の人も、眠って起きる時間帯が人並みより遅くにずれている以外はまったく正常。自分に合った時間帯に生活できれば十分に実力を生かしたパフォーマンスを発揮できます。夜勤やシフト勤務に対しては、朝型の人よりも適応しやすいというメリットさえあります。

だから、夜型や超夜型の人が学校や会社でハッピーに生きていくために、始業時刻が遅い学校や仕事の選択肢がもっと増えていくといいなと思います。また、夜型の人が遅い時刻から活動を始めることが、多様性の一つとして受け容れられる社会となっていくことを願います

参考文献

  1. Horne JA, Ostberg O. A self-assessment questionnaire to determine morningness-eveningness in human circadian rhythms. Int J Chronobiol. 1976;4(2):97-110.
  2. Koskenvuo M, Hublin C, Partinen M, Heikkilä K, Kaprio J. Heritability of diurnal type: a nationwide study of 8753 adult twin pairs. Journal of Sleep Research. 2007;16(2):156-162. doi:10.1111/j.1365-2869.2007.00580.x
  3. Roenneberg T, Kuehnle T, Pramstaller PP, et al. A marker for the end of adolescence. Current Biology. 2004;14(24):R1038-R1039. doi:10.1016/j.cub.2004.11.039