周期性四肢運動で困る人が減るために

睡眠中の周期性四肢運動(periodic limb movements of sleep, PLMS)。終夜睡眠ポリグラフィで測定する項目の一つです。そして、周期性四肢運動障害 (periodic limb movement disorder, PLMD)は、睡眠障害を真面目に勉強した人なら必ず目にしたことのある病名だと思います。

しかし、このPLMSという病態やPLMDという疾患について、いまひとつ捉えどころがないと感じている人も多いのではないでしょうか?

この記事では、PLMSがなぜ大事なのかについての個人的な見解や、診断およびマネジメントについて、文献からの引用も交えつつ記していきます。

忙しい人のためのまとめ
  • PLMS(睡眠中の周期性四肢運動)は、頻度が高い割には臨床症状の原因となることが少ない。このことが、見過ごされがちな要因と考えられる。
  • 周期性四肢運動の発見に終夜睡眠ポリグラフィが欠かせないことや他疾患との鑑別がややこしいこともまた、見過ごされやすい要因となっている。
  • しかし中には、PLMSの治療によって明らかにQOLが改善するケースもある。
  • 「睡眠の不調の背景にPLMSがあるかもしれない」という視点を常に持つことが大切である。

なぜ大事なのか

稀に非常に困っている人がいる

はじめに強調しておきたいのは、周期性四肢運動(PLMS)を治療しないと大変なことになる人が、稀ながらいることです。

そのような事例を集めた論文をご紹介します。

スペインの睡眠専門医療機関を受診した患者さんで、睡眠中の異常行動(寝言や四肢の動き)を主訴とた人を対象とした研究です [1]。
一般的には、レム睡眠行動障害などの睡眠時随伴症がまず鑑別に上がる状況ながらも、この論文で取り上げられている17名の患者さんは、周期性四肢運動の回数が多い一方(中央値が61.9回/時で範囲が15.6回/時~147.5回/時)、レム睡眠中には筋緊張の低下が見られており、レム睡眠行動障害は否定されていました。年齢の範囲は48歳から77歳で、17例中15例が男性でした。

この17名中、5名がベッドから転落しており、2名が配偶者の首や髪の毛をつかむという危険な行動をとっています。そして3名のベッドパートナーと患者1名が、顔や腕、脚に怪我をしました。

要するに、睡眠中に激しく脚や腕を動かすせいで、怪我をする場合さえあるのです

そして睡眠障害国際分類第3版改訂版 (International Classification of Sleep Disorders, Third edition, Text Revision, ICSD-3-TR)にも、「PLMSは、患者によっては深刻で暴力的でさえあり、異常な睡眠行動や不快な夢の想起を刺激したり、契機となったりする」と書かれています [2]。

治療によって症状の改善する人が確かにいる

とは言え、大部分のPLMSは、何の治療をしなくてもそう問題のない無害なものです。
従って治療してみても「何も変わりません」と言われる場合も少なくありません
しかし治療を始めてから夜中に目が覚める回数が明らかに減ったり日中の眠気がかなり良くなったりと、はっきりと症状が改善する人が、数が多くはないものの確かにいます
だから、睡眠障害を診る時にはPLMSの可能性について常に頭の片隅に置いておかねばならないと私は思っています。

なぜ取り上げられにくいのか

ここまで、睡眠中の周期性四肢運動(PLMS)が重要である理由を説明してきました。しかし実際のところ、睡眠医療の現場においてさえ、PLMSが話題に上ることは少ないように思います。
なぜでしょうか。

無症状のPLMSが非常に多い

まず、PLMS自体は決して珍しくありません。例えばスイスの地域住民2162人(平均年齢58.4歳)を対象として終夜睡眠ポリグラフィを行った調査では、PLMSが1時間あたり15回を越えた人は全体の28.6%でした [3]。

一方で、なんらかの症状を伴うPLMSは多くありません。ICSD-3-TR [2] には、「睡眠の障害や過度の眠気を訴えるものは、PLMS(周期性四肢運動)が1時間あたり15回を超える総人口の約4.5%であった」とあります。少ないですね!

睡眠医学のメジャーな教科書であるPrinciples and Practice of Sleep Medicine 第7版で周期性四肢運動障害について読むと、もっと辛辣です [4]。

The clinically reported relation between sleep complaints and PLMS may, however, be coincidental, given that high rates of both PLMS and sleep complaints in older adults. (Principles and Practice of Sleep Medicine 7th edition)

臨床現場より報告された睡眠の訴えとPLMSの関連は、高齢者におけるPLMSと睡眠の訴えがいずれも多いことを考慮すると、偶然かもしれない。(筆者訳)

もっとも、このすぐあとに、子どものPLMSは睡眠の問題と一緒に起こりやすいことが書かれており、

PLMD is considered a useful pediatric diagnosis.

PLMDは小児に対する診断としては有用かもしれない。(筆者訳)

とも書かれています。

まあこの教科書にある「高齢者においてPLMSと臨床症状の関連は疑わしい」「小児だと関連している可能性がある」のどちらも受け入れるとして、高齢者と小児の間には数十年に及ぶ歳月があるわけで、そのゾーンにいる若年から中年の人々については、PLMSと臨床症状の関連をすべて「偶然」と片付けなくても良いのではないかなと私は思います。

ちなみに、PLMSに対する治療を行い効果があったとして個人的に記憶に残っている症例は、確かにだいたい4-50代くらいまでの人が多かったです。記録をとっていたわけではないので本当に個人的な印象に過ぎませんが。

よく見かける異常である割に、悪さをしていることは多くはない――そのギャップのせいで、実際に問題を引き起こしているPLMSまでも見過ごされやすくなる――そのような構造があるのではないでしょうか。

かめさん
かめさん

狼少年みたいですね!

Principles and Practice of Sleep Medicine, Seventh Edition

Meir H. Kryger MD. FRCPC (著), Thomas Roth PhD (著), Cathy A Goldstein MD (著)

やさしい睡眠医学はAmazonアソシエイトおよび楽天アフィリエイトに参加しています

RLSなど他の睡眠障害との境目がわかりにくい

いまもこの原稿を書きながら感じていることですが、PLMSの概念ってややこしいです。そのために、余計理解されにくい面があるようにも思います。

まず、睡眠障害国際分類第3版改訂版 (ICSD-3-TR)による周期性四肢運動障害の診断基準はこちらです [2]。

(なお、診断について理解を深めるためには、併記されている「注」などを参照することが必要です。また、転記時のミスもあるかもしれません。臨床現場では必ず原文を参照してください)

周期性四肢運動障害の診断基準(ICSD-3-TRより)

基準A-Dを満たす

A. 睡眠ポリグラフ検査(PSG)で、睡眠中の周期性四肢運動(PLMS)が示される。

B. PLMSの頻度は小児で1時間あたり5回を超え、成人では15回を超える。

C. PLMSが臨床的意義をもつ睡眠障害を引き起こしたり、精神的、身体的、社会的、職業生活上、教育上、行動上あるいはその他の重要な領域において臨床的に重要な機能障害をもたらす。

PLMSとその症状は、その他併存する睡眠障害、身体疾患、または精神疾患ではよく説明できない(例、無呼吸、低呼吸や呼吸努力関連覚醒反応 (RERA)に伴うPLMSは病的所見と判断してはならない)。

このように、周期性四肢運動 (periodic limb movements of sleep) は「睡眠中の周期的な四肢の動き」を意味する症候ですが、周期性四肢運動障害 (periodic limb movement disorder) は「周期性四肢運動のせいで困った症状が出ている病気、ただし周期性四肢運動の出る原因となる他の病気がある場合を除く」病名です。
まず、両者の用語を使い分けなければなりません。

図で示すとこんな感じになります。 (私作成。もし何かおかしなところがあると気が付かれた方はお知らせください):

ICSD-3-TRを見ただけでは、周期性四肢運動障害 (PLMD)という独立した病名のついている部分だけが意味を持っているような気がしがちなのではないでしょうか。実際のところ、病名としての基準は満たさないPLMS…つまり、レストレスレッグス症候群やナルコレプシー、未治療の閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea, OSA)、レム睡眠行動障害に随伴するPLMSであっても、症状を引き起こして患者さんを困らせていれば、立派に治療を要する問題です

検査されにくい

睡眠に不具合があって病院に行く場合、たいていの人はまず、閉塞性睡眠時無呼吸 (obstructive sleep apnea, OSA)の検出を目的とした検査を受けます。ただし、そうした場合によく使われる在宅での簡易睡眠検査、いわゆる簡易モニターではPLMSは検出できません

簡易モニターで特に異常所見のない場合でも本人が自覚症状に困っているなら、次は終夜睡眠ポリグラフィ (polysomnography, PSG) による精査へ進むことが筋です。簡易モニターでは検出できなかった睡眠時無呼吸・低呼吸や、それこそPLMSの有無を確認する必要がありますから。

しかしこれまで診療してきた患者さん方の診療情報提供書などから受けた印象としては、簡易モニターで問題がなかった場合に「睡眠時無呼吸はなさそうですね」とそれ以上の検査は行われないことも、睡眠専門医療機関でないところではありがちなようですし、PSGを実施している医療機関でもPLMSは測定していないという場合が少なくないようです。

PSG実施の際に準拠すべきとされている「AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル」ではPLMSの報告が推奨されているのですが…。測定にかかる手間やコスト、その割にPLMSによる問題がある人が多くはないことから切り落とされがちなのかもしれません。

治療法が確立していない

PLMSの治療法は確立していません。2025年の初頭に米国睡眠医学会(American Academy of Sleep Medicine, AASM)がレストレスレッグス症候群とPLMSの治療についてガイドラインを出しているのですが [5]、そこに書かれているPLMS関連の推奨(すなわち、ある程度のエビデンスがあること)は、以下の2つだけです。

PLMDのある成人に対してAASMはトリアゾラムの使用を推奨しない(条件つき推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)
PLMDのある成人に対して、AASMはバルプロ酸の使用を推奨しない(条件つき推奨、エビデンスの確実性は非常に低い)

うん…他にちゃんとしたエビデンスがなかったんだということはすごーく伝わってくるんですが、臨床現場的には使い勝手が悪いですね、この推奨。「じゃあ何を使えば良いねん!」ってなる。

後述しますが、実際のところPLMSに対してはRLSと同様の治療が行われることが多く、それでちゃんと効く感触も個人的にはあります。しかしエビデンス的にきちんとした推奨がないとなると、「せっかく検査をして異常を発見してたとしても為すすべがないのでは」と、PLMSのマネジメントそのものに後ろ向きになってしまう医師がいても無理はないなあとは思います。

診断するには

基本的なこと

ここで、簡単に診断についておさらいしておきましょう。

終夜睡眠ポリグラフィ(PSG) における周期性四肢運動(PLMS)のスコアリングで、特に大事な部分はこちらです。
「AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル」より全部で5項目ある部分の2のみのご紹介 [6]:

2.PLMSシリーズは以下のように定義される:
a. PLMSシリーズを定義するためには、連続するLM(下肢運動)イベントが少なくとも4つ以上必要である。

b. PLMSシリーズに含めるためのLM間(連続するLMの各開始から開始までの時間として定義される)の長さは5-90秒である。

c. 左右のLMの開始時点の間隔が5秒未満であれば、1つのLMとしてカウントする。この一連のLMに続き次のLMまでの時間(長さ)は、最初のLMの開始から次のLMの開始までで計測される。

まあ要するに、「4回以上続けて脚がビクンとしていたらPLMSだよ!」ということです。

なお、

4. 無呼吸、低呼吸、呼吸努力関連覚醒反応に先行する0.5秒からイベント後の0.5秒までの間に出現したLMは判定しない

という基準もあり、睡眠中の無呼吸や低呼吸とほぼ同時に生じた脚動だと、PLMSとはみなされません。

それでも、眠時無呼吸の重症度を示す無呼吸低呼吸指数と周期性四肢運動指数の両方がそれなりに高い人もめずらしくはありません。

AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル:ルール,用語,技術仕様の詳細 VERSION 3

米国睡眠医学会 (著), 日本睡眠学会 (翻訳)

やさしい睡眠医学はAmazonアソシエイトおよび楽天アフィリエイトに参加しています

睡眠時無呼吸とPLMSの両方がある人をどう治療するか

このことについて言及しているガイドラインは、私が知る限りは、この記事を書いている段階でありません。
個人的な考えとしては、基本的にはまずは睡眠時無呼吸の治療を進めていくということで良いのではないかと考えます。というのは、やはり睡眠時無呼吸症候群が症状の原因となっている確率の方が高いからです。

先ほどから書いてきているようにPLMSによって睡眠の問題が生じることは多くはありません
一方で、睡眠時無呼吸によって自覚症状が生じる人はまあまあ多いです。睡眠時無呼吸症候群の有病率を世界で初めて報告したYoungらによる有名な論文では、無呼吸低呼吸指数が5以上だった女性の22.5%, 男性の15.5%が過眠症状を訴えていたと報告しています(なお、この過眠症状の基準は、「日中に強い眠気を感じる」「長い睡眠時間をとっても起床時に回復した感じがしない」「日中のコントロールできない眠気があり生活に支障が出る」のいずれも週2回以上ある場合なので、厳しめです)[7]。

でも、以下のような場合には、脚の症状に対する治療も速やかにおこなっていきましょう。

  • 睡眠中に足が不随意運動を起こしている自覚が明確にある
  • 実はレストレスレッグス症候群も合併していた

PSG上でPLMSの数値が高くても治療をしない場合があるのは、「治療をしても利益があるとは限らない(むしろ治療行為による不利益が生じるかもしれない)」からなので、自覚症状が明らかにある人なら治療をすることによって利益がもたらされる確率が大幅に高まります。

小児と大人の違い

だいたい年齢が増すほどPLMSは増える傾向があります。だからこそ、小児だとわずかな周期性四肢運動であっても異常ということ考え方か、小児の方が基準値は厳しいです。成人で15回/時以上を異常とみなすのに対し、小児では5回/時以上の周期性四肢運動で異常があるとみなされます。

マネジメントの実際

RLSと治療法は同じ(ただし、エビデンスは乏しい)

上にも書いた通り、周期性四肢運動の治療法は確立していません。ただ、レストレスレッグス症候群 (RLS)と似たような機序が想定されていることもあり、経験則的にRLSに対する場合と同じ治療が行われる場合が多いようです(たとえRLSを併発していない場合であっても)。

米国で医療従事者への継続教育に用いられるオンライン資料StatPearlsにある “Periodic Limb Movement Disorder” の項目では、PLMDの患者に対して使用する根拠となる研究はないと断ったうえで、RLSの治療に用いられるドパミン作動薬やα2δリガンドがPLMSの回数を減らすかもしれないかもしれないと紹介しています [8]。個人的には、これらでちゃんと効果が出る感覚があります。

なお、PSGではPLMSが記録されているもののそれが臨床症状と結びついているかは判断が難しい…という人は、「試しに0.125mg程度の低用量のプラミペキソールを処方して睡眠の症状が改善するか見てみる」という診断的治療を行うのもアリです。

なお、上記のStatPearlsでは、クロナゼパムや、(私自身はPLMSを抑える目的で使ったことはありませんが)メラトニン、バルプロ酸、セレギリンが有効という研究もあったとまとめています。

まとめ

PLMSは頻度が高い割に無症候である場合が多く見過ごされがちですが、治療によって著明に改善する症例も存在します。
睡眠に不調を訴える人を見た時に、「PLMSが原因かもしれない?」という選択肢を頭の中においていただければと思います。

長い記事でしたが読んでいただきありがとうございました。

参考文献

1. Gaig C, Iranzo A, Pujol M, Perez H, Santamaria J. Periodic Limb Movements During Sleep Mimicking REM Sleep Behavior Disorder: A New Form of Periodic Limb Movement Disorder. Sleep [Internet]. 2017 Mar 1 [cited 2025 Oct 12];40(3). Available from: https://academic.oup.com/sleep/article/2731733/Periodic

2. 日本睡眠学会, 監訳. 睡眠障害国際分類 第3版 改訂版 (ICSD-3-TR). 東京: 一般社団法人日本睡眠学会; 2025.

3. Haba-Rubio J, Marti-Soler H, Marques-Vidal P, Tobback N, Andries D, Preisig M, et al. Prevalence and determinants of periodic limb movements in the general population. Ann Neurol. 2016 Mar;79(3):464–74.

4. Allen RP, Montplaisir J, Walters AS, Högl B, Ferini-Strambi L. Restless legs syndrome (Willis–Ekbom disease) and periodic limb movements during sleep. In: Kryger MH, Roth T, Goldstein CA, Dement WC, editors. Principles and Practice of Sleep Medicine. 7th ed. Philadelphia: Elsevier; 2021. p. 1119–31.

5. Winkelman JW, Berkowski JA, DelRosso LM, Koo BB, Scharf MT, Sharon D, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2025 Jan;21(1):137–52.

6. 米国睡眠医学会著;日本睡眠学会監訳. AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル: ルール,用語,技術仕様の詳細. Version 3. Tōkyō: 日本睡眠学会; 2025.

7. Young T, Palta M, Dempsey J, Skatrud J, Weber S, Badr S. The Occurrence of Sleep-Disordered Breathing among Middle-Aged Adults. N Engl J Med. 1993;328(17):1230-1235. doi:10.1056/NEJM199304293281704

8. Joseph V, Nagalli S. Periodic Limb Movement Disorder. [Updated 2023 Feb 14]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK560727/