- 眠気に加えて情動脱力発作がある人は、早めに睡眠専門医療機関へ紹介を
- 頻度の高い原因は、睡眠時無呼吸症候群と睡眠不足
- 夜間の睡眠時間が長くない場合は睡眠延長を勧める
「最近、眠くてたまらないんです」そんなことを訴える患者さんが外来に来たら、どうしますか?

睡眠時無呼吸症候群をまず思いつくけれどその割には痩せている…

ナルコレプシーという病気を思い出したけれど、眠気だけでいきなり専門医に紹介して良いものかどうかわからない…
ひとまずスクリーニングとして採血や頭部の画像検査をしてみる、そんな場合も多いのではないでしょうか。
患者さんが困っているなら即専門医療機関に紹介するという流れでも全然アリだと私としては考えていますが、専門医療機関が遠すぎるなどの理由で紹介のハードルが高いということも残念ながら起こりがちです。
そこでこの記事では、睡眠の検査設備が十分でない医療機関でも実施可能なアセスメントや、特に専門医への紹介が必要なケースはどのようなものであるかについて書いていきます。
木花(もっか)
- 日本睡眠学会総合専門医
- 睡眠専門医としては、地域からの紹介をたくさん受ける睡眠学会認定A施設にも、検査設備の限られている地域の病院にも勤務経験があります。
- 睡眠の世界に入る前は、内科医として勤務していた経験があります。
ステップ1 今すぐ紹介が必要か?
結論から言うと、初手から専門医療機関へ紹介することをお勧めするのは、「タイプ1のナルコレプシーが疑われる人」です。
なぜこのグループの優先順位が高いかというと、ナルコレプシーの診断と治療開始が、現状のシステムでは日本睡眠学会認定医療機関(A型)もしくはそれに準じる施設でしかほぼ可能ではないからです。それ以外の医療機関で評価を進めてもナルコレプシーの有無について言い切れないので、真にナルコレプシーがある場合に治療の開始が遅れてしまうことが懸念されます。
ではどういう人でナルコレプシータイプ1が疑われるかというと、ざっくり言えば、「すぐ居眠りする」+「情動脱力発作(カタプレキシー)がある」人です。
情動脱力発作は、ナルコレプシーに対して特異性が非常に高い症状であり、強い眠気と情動脱力発作の2つそろっている時点でかなり強くナルコレプシーが疑われます。

と言いつつ、情動脱力発作があるという触れ込みで送られてきた人の症状が、実際には情動脱力発作ではないという場合もあったりするよね。

そのあたりを見分けるのは専門医の仕事! 迷ったらご紹介でよろしいです。
ご参考までに私は、こんな表現で情動脱力発作の有無を尋ねています:
「笑ったり怒ったりなど感情が動いた時に、体の力がどこか急にガクッと抜けるようなことはありませんか?」
「典型的には、お笑いをみてワハハっと笑った時にお箸をぽろっと落とすとか」
「膝がカックンしたり、顔が曲がったりという場合もあります」
「感情の動きの中でも得に、ポジティブな感情に伴うことが多いです。笑ったり、嬉しかったり、得意になったり」
意識消失は伴わないこと(稀に発作後そのまま眠り込む方がいますが、少なくとも発作開始時点の意識はクリアです)と、通常は数分程度で回復することも特徴的です。
ここで、ナルコレプシータイプ2疑いの場合は紹介を急がないのか? という疑問をもつ方も中にはいらっしゃるかと思います。
ナルコレプシータイプ2は、情動脱力発作を伴わないナルコレプシーです。これを診断する際には(タイプ1の場合と違って)、眠気の原因となり得る他の疾患などを除外する必要があります。
具体的には、睡眠障害国際分類第3版改訂版 (ICSD-3 TR) [1] におけるナルコレプシータイプ2の診断基準の一部にこう書かれています。
E. 他の原因、例えば睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、睡眠・覚醒相後退障害、あるいは薬物または物質やその離脱の影響では、過眠症状やMSLT所見をよく説明できない。
すなわち「ナルコレプシーかもしれない」と思われるほど眠気の強い人でも、原因(睡眠不足や睡眠時無呼吸)を見つけて対処することによって劇的に眠気が改善する場合があります。この評価や対処は、睡眠専門医療機関でなくてもできることです。
ですから、タイプ2のナルコレプシー疑いと思われる人については、まずはこの先のステップをご参考に他に考えられる原因があるか評価してみていただければと思います。
強い眠気とともに情動脱力発作の訴えがある人は、ナルコレプシータイプ1が疑われるので、早めに紹介しよう!
ステップ2 睡眠時無呼吸症候群「らしさ」はあるか?
眠気を主訴として病院を受診した人で、最も多い眠気の原因は睡眠時無呼吸症候群であると言われています。
少し古いデータになりますが、2003年から2004年にかけて日中の眠気を主訴として東京の神経研究所にある睡眠学センター外来を受診した患者1243人について、眠気の原因は以下のような内訳であったとする報告があります [2]。
| 病名 | 人数 | % |
|---|---|---|
| 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 | 431 | 34.7% |
| 特発性過眠症 | 136 | 10.9% |
| ナルコレプシー | 109 | 8.8% |
| 行動誘発性睡眠不足症候群 | 88 | 7.1% |
| 概日リズム睡眠障害 | 76 | 6.1% |
(文献 2より著者改変。6位以下の原因はここでは割愛)
睡眠専門医療機関の受診者なので、頻度の低い病気の人も多いというバイアスはありそうなものの、注目すべきは、その状況においてなお、閉塞性睡眠時無呼吸症候群が眠気の原因として圧倒的1位となっているということです。そのくらい、睡眠時無呼吸は眠気の「よくある」原因なのです。
では、どういう人において、特に強く睡眠時無呼吸症候群を疑えば良いでしょう?
ひとつの目安として、STOP-Bangという質問票を紹介しておきます [3]。これは、8つの質問に「はい」「いいえ」で回答して、「はい」が3つ以上の人が睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いとするものです。
その8つの質問とは、以下の通り。各質問の頭文字を繋げると、STOP-BANGになります。
STOP-Bangを構成する質問 (クリックすると開きます)
| S | Snoring (いびき) | 大きないびき(閉じたドアの向こう側からでも聞こえたり、隣で寝ている人から起こされるくらいのもの)がありますか? |
| T | Tired (疲労) | 運転している最中や誰かと会話している最中に眠るような疲労感や眠気が日中にありますか? |
| O | Observed (観察) | あなたが寝ている間に呼吸が止まっている、息を詰まらせてぜいぜいしていると、人から言われたことはありますか? |
| P | Pressure (血圧) | 血圧が高い、もしくは高血圧の治療中ですか? |
| B | Body mass index (BMI) | BMI 35以上ですか? (日本人に関しては30が良いとする研究もある[4]) |
| A | Age (年齢) | 50歳以上ですか? |
| N | Neck size (首周囲径) | シャツの首回りが40㎝以上ですか? |
| G | Gender (性別) | 男性ですか? |
ここから浮かび上がってくるのは、典型的な睡眠時無呼吸症候群患者の像です。太った中高年男性で、高血圧治療中であり、眠そうにしている。
男女どちらでも、またどんな年齢でも、たとえ痩せていても、重症の睡眠時無呼吸症候群を持っている場合はあるわけですが、やっぱりなんだかんだいって、STOP-Bangが指し示すような人物像にあてはまる人がボリュームゾーンとなっている印象はあります。
参考までに、とあるシステマティックレビューによると、STOP-Bangの8つの質問に3つ以上「はい」と答えた場合に中等度(無呼吸低呼吸指数 15以上)の睡眠時無呼吸症候群が存在している感度は94%、特異度は34%とされています [5]。日本人を対象とした研究でもだいたい同じ結果になります [4]。
とはいえ、STOP-Bangの項目全部を覚えておくのもなかなか難しいかと思います。
とりあえず、強い眠気を訴える人には、「別の部屋にいても聞こえるほどの大きないびきをかくか」は尋ねておきましょう。この質問が肯定されれば、眠気と合わせてすでにSTOP-Bang 2点です。その上男性だったり、女性であっても高血圧があったり50歳以上であったりすれば、もうSTOP-Bang 3点に届きます。
こういう人たちには、(ナルコレプシータイプ1が強く疑われるわけでない限り)、初手として睡眠時無呼吸症候群の検査を行うということでよろしいと思います。

でも、STOP-Bangにあまり当てはまらないような方で治療を要する睡眠時無呼吸症候群が見つかったり、逆に当てはまりまくる方で意外と軽症であったり…ってありますよね。

はい、例外はいくらでもあります! 迷うケースは睡眠検査をする(もしくはできる病院へ送る)ことがお勧めです!
なお、ナルコレプシーとは異なり、そもそもの患者数が多い睡眠時無呼吸症候群を診られる病院はけっこう豊富にあります。
質が担保されているという意味では日本睡眠学会が認定する専門医療機関(A型とB型いずれも睡眠時無呼吸症候群を診療可能です)が安心ですが、認定施設でなくとも睡眠時無呼吸症候群の診療に実績のある医療機関は各地に存在しています。
まとめ:眠気がある時に睡眠時無呼吸症候群の可能性を考慮することは必須。STOP-Bangの質問項目を参考にしてスクリーニングをしましょう。
ステップ3 薬剤の副作用である可能性は?
眠気の原因かもしれない薬剤としては、精神科系の薬剤(抗うつ薬、抗精神病薬、抗不安薬、睡眠薬)抗てんかん薬、神経障害性疼痛の治療に用いられるα2δリガンド、抗ヒスタミン薬、オピオイドといったあたりがよく遭遇するところです。β遮断薬も添付文書を読むと「眠気」が副作用に入っていたりしますね。
患者さんの症状が副作用によるものかどうか、どう評価するかというのは、私がわざわざ論じなくても臨床医の先生方なら十分知見を持たれている部分と思いますので割愛いたしますね。
あ、でも、オレキシン受容体拮抗薬の副作用でナルコレプシーを疑われ紹介されてくるレベルで異様に眠くなる人がたまにいることは存外知られていない気がします。(この問題以外は安全性が高くて良い薬だと思っているのですけどね)
生活に支障の出るレベルで眠気の強い人がレンボレキサントなどオレキシン受容体拮抗薬を服用している場合、飲み始めたタイミングと眠気の出てきたタイミングが近いかどうかは必ず聞くようにしています。
ステップ4 精神疾患・身体疾患が眠気の原因となっている可能性は?
私に精神科の診療経験がないので(そして睡眠医療の世界には精神科医でもある先生がたくさんいらっしゃるので)精神疾患が関連する眠気についてここで多くを語ることは差し控えます。
個人的な印象としては、強い眠気があるものの睡眠医学的な原因がはっきりせず、覚醒刺激薬などによる治療によっても眠気が改善しない人の中には、精神科に通院中だったり過去に通院歴があったりという人が比較的多く含まれるようには思っています。
ただしたとえ精神疾患に罹患している人であっても、その疾患が眠気の原因であるとは断定するためには評価のプロセスが必要です。特に睡眠時無呼吸症候群を合併していることは珍しくありません。また、睡眠不足が眠気の一因であろうと思われる人も、このグループにあっても珍しくありません。
睡眠障害国際分類第3版改訂版(ICSD-3-TR)には、身体疾患による過眠症という分類があります。
この項目の解説によると、過眠症状は、以下のような身体疾患に関連して起こり得ます:
- パーキンソン病およびレビー小体型認知症
- 外傷性脳損傷
- 遺伝性疾患(プラダー・ウィリー症候群、筋強直性ジストロフィー、脆弱X症候群、メビウス症候群、ニーマンピック病C型、ノリエ病など)
- 脳腫瘍、感染症、炎症、その他の中枢神経病変
- 甲状腺機能低下症などの内分泌障害
- 閉塞性睡眠時無呼吸を十分に治療された患者に残存する眠気
自分が診る場合は、甲状腺ホルモンは一度は測定するようにしています。血液検査だけで問題がわかり、かつ甲状腺機能異常は有病率が比較的高いので(と言いつつここから実際に何か見つかる人は数パーセントにも満たない印象ですが)。
個人的には、症例報告として聞いたことのある「高齢発症のナルコレプシーを精査したら自己抗体陽性の悪性腫瘍が見つかった(つまり、ナルコレプシーは傍腫瘍性神経症候群の症状として出現していた)」という事例が印象に残っています。
もっとも、その症例を診療した先生にうかがったら、「同じように高齢で精査しても何も見つからなかった人もいますよー」と言っていたし、私自身、調べても悪性腫瘍の合併はなかった高齢発症ナルコレプシーの方を知っているので、高齢発症ナルコレプシーであれば必ず身体疾患が見つかるというわけでもありません。
ステップ5 その他の睡眠障害が原因という可能性は?
ナルコレプシーや睡眠時無呼吸症候群についてはすでに述べましたが、他にも、眠気の原因となり得る睡眠障害は色々とあります。
例えば不眠症。いわゆる不眠症の人は、「眠れない」という訴えが前景に来ることが普通ですが、眠気を主訴とする人も稀に見かけます。眠気自体は慢性不眠症の診断基準にある症状のひとつです。
他に比較的よく遭遇するものとしては、睡眠・覚醒相後退障害や周期性四肢運動障害あたりです。なお、10-20代くらいの若い人で「日中に眠い」という訴えと「夜に眠れない」という訴えがコンボで来ると、睡眠・覚醒相後退障害がかなり疑わしいです。
ただこれらは、睡眠の専門家でなければ評価が難しい領域ではあるので、疑ったら結局専門家へ紹介いただくこととなります。
ステップ6 睡眠不足の有無は、あえて最後に評価する
睡眠専門医療機関を受診するレベルで眠気に困っている人で、睡眠不足が眠気の原因という場合は非常に多いです。
ステップ1で紹介した研究でも、睡眠専門医療機関を受診した人のうち「行動誘発性睡眠不足症候群」(ちなみにこれは、現在使われているよりも古い睡眠障害国際分類の第2版をもとにした診断名です)と診断された人の割合は7.1%ということでしたね。
特に、中学生・高校生に関して言えば、一度データをまとめて学会発表したことがあるのですがその頃いた睡眠専門医療機関では、眠気を訴えて受診する人の3-4割がメインの原因が睡眠不足でした。
※ 睡眠不足をどう判断するかについては、こちらの記事もご覧ください。
そんなわけで、眠気の原因として睡眠不足はかなりありふれてはいます。そして「この人、睡眠不足だろうな」という人は問診票を見た段階でだいたいわかるものではあります。
しかし、「あなたの眠気は睡眠不足が原因ですね」と言う前に、まずは一通りの評価をしなければなりません。
睡眠障害国際分類第3版改訂版にある「睡眠不足症候群」の項目にも、「症状と徴候は、概日リズム・睡眠覚醒障害、その他の併存する睡眠障害、身体疾患、精神疾患、(中略)ではよく説明できない」とあり、他の原因の除外は必須ですからね。
それに、患者さんの立場にたって想像してみましょう。もし、診察室に入って1分以内にこんな会話になったら?

眠くてお困りなんですね。質問票への回答からは睡眠不足が原因だと判断できます、もっと寝ましょう!

(なんの検査もせずにいきなりなんだい、そんなことAIにだって言えらあ!)
まあ、これは極端な例としても。
多くの人は睡眠よりも大事なことのために良かれと思って睡眠を削っているわけであり(その結果として長期的にはパフォーマンスが落ちて大事なことに手が回らなくなりがちなのですが…)、何の心の準備もさせずにいきなり「睡眠時間を増やせ」と正論をぶちかましたところで受け入れ難い人が多いような気がするんですよね。
睡眠不足が眠気の原因である場合、改善させるためにはご本人の決意と努力が欠かせません。
これまでの行動を変えて睡眠時間を増やさなければならないのだと納得していただくために、「他の原因も十分に考慮した上で、やはり、あなたの眠気は睡眠不足が原因だと思います」と、専門家が思考過程を共有することが大切なのではないかと私は考えています。
ステップ7 それでも解決しなければ紹介を
ここまで、段階を踏んで強い眠気の原因を評価する方法を提案いたしました。とは言え、どうにも評価の難しい人は当然存在しますし、「睡眠時無呼吸症候群を治療しても眠気が改善しない」「ナルコレプシーのような気もするが紹介すべきかどうかわからない」など、マネジメントや判断に迷う場合も少なからずあると思います。そのような症例を扱うことこそ、専門家の役割です。お困りならば睡眠専門医へ紹介を!
以上、どこかのどなたかのお役に立てれば幸いです。
参考文献
- 日本睡眠学会, 監訳. 睡眠障害国際分類 第3版 改訂版 (ICSD-3-TR). 東京: 一般社団法人日本睡眠学会; 2025.
- Komada Y, Inoue Y, Hayashida K, Nakajima T, Honda M, Takahashi K. Clinical significance and correlates of behaviorally induced insufficient sleep syndrome. Sleep Medicine. 2008 Dec;9(8):851–6. https://doi.org/10.1016/j.sleep.2007.08.018
- Chung F, Abdullah HR, Liao P. STOP-Bang Questionnaire. Chest. 2016 Mar;149(3):631–8. https://doi.org/10.1378/chest.15-0903
- Oshita H, Fuchita H, Ito N, Senoo M, Isoyama S, Yamamoto Y, et al. Validation of the Japanese Version of the STOP-Bang Test for the Risk Assessment of Obstructive Sleep Apnea Syndrome. An Official Journal of the Japan Primary Care Association. 2019 Mar 20;42(1):26–31. https://doi.org/10.14442/generalist.42.26
- Nagappa M, Liao P, Wong J, Auckley D, Ramachandran SK, Memtsoudis S, et al. Validation of the STOP-Bang Questionnaire as a Screening Tool for Obstructive Sleep Apnea among Different Populations: A Systematic Review and Meta-Analysis. Arias-Carrion O, editor. PLoS ONE. 2015 Dec 14;10(12):e0143697. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0143697

